京都にある喫茶店「ひだまり」にて催した初の個展です。
当時私は、東京で靴作りの修行期間中でした。
靴作りの文化が残る町に身を置いて、
熟練職人さんから、手製靴の歴史、
手縫いの靴作りが最も盛んであった頃の話を聞かせてもらうのが、
楽しくてしょうがありませんでした。
丁稚奉公の世界で、職人は住み込みで親方の元へ入り、
夢中で技を盗んだ話。
流れの靴職人がいて、自分の技術を売り込んで工房を渡り歩いていたという話。
だし屋さんが縫い靴の回収に工房を回っていたという話…。
そしてなにより、私にとって印象深かったことは、
当時、町に靴作りの音があふれていて、
私達の生活の中に、ごくあたりまえに靴作りの風景があった
ということでした。
東京、ところ浅草。
今もなお、靴作りの文化が残る町です。
私は浅草で手製の靴作りと出会い、その奥深さに魅了されました。
みなさんは靴作りと聞いてどのようなイメージを抱かれるでしょうか?
工場で大きな機械を用いて作っているイメージが強いでしょうか?
そもそも靴作りは二畳ほどの作業スペースがあればできるものでした。
住居に作業場を設け、靴作りに明け暮れる職人が数多くいたといいます。
生活の中にごくあたりまえに靴作りの風景がありました。
そんな風景も月日とともに失われ、目にすることが稀になりました。
この靴作りの風景を、靴作りの音を、
たくさんの人に触れてもらえる機会を作りたい。
まだまだ未熟者ではありますが、
伝統的な手縫いの靴作りの実演を行うことにしました。
少しでも靴作りの風景を感じ、記憶の片隅に
靴作りの音を体感していただければうれしく思います。